共産党が当選する沖縄の現実
今回は、政治の話題についてです。
中でもかなりミクロな沖縄の現実について、というテーマ。
先日沖縄を旅行して、考えたことをブログにしたいと思います。
東京など本土で暮らしている我々には、沖縄の政治というと、共産党が唯一小選挙区で議席を獲得しているということもあり、"左翼"だとか、"反基地運動"というイメージを持つ方が多いでしょう。
中には"中国に占領されたいのか"などといった過激な意見も聞こえてきます。
沖縄の地理的関係
この話題を考えるにあたって、まずは沖縄の地理的関係を見てみましょう。
実は、沖縄と一口に言っても縦長ですから、那覇空港のある那覇市など中心部は、かなり南に偏っています。
大手高級ホテルも那覇市の中心部から、北谷町までのあたりに集中しています。
ちなみに、美ら海水族館は本部町にあり、一般道で2時間、高速でも1時間以上かかる辺鄙な場所に位置しており、
その道中は、以下のように、きれいな砂浜や崖のある海がただひたすらに広がっています。
【本部町 エメラルドビーチ】
【恩納村 万座毛(景勝地)】
でもって、平和記念公園やひめゆりの塔があるのは南端の糸満市です。
沖縄の現実
一番伝えたいのは何かといえば、沖縄は、意外と平和なんですね。
空も、おそらく演習や有事でもない限りそこまで気になるほど騒々しくもない。(離発着する空港の至近は除く)
海も、平和できれいな海岸線が永遠と続いています。
米軍基地がほとんどの面積を占めているのでは?と思った方もいるでしょう。
しかし、米軍の飛行場は羽田や関空のような海を埋め立てて造った空港ではなく人気のない内陸がメインですし、
大きな面積を占めているのは事実でも、以下の写真で赤く丸を付けたような、内陸部の演習林などがかなりの比重を占めているようで、想像していたほどの存在感はありませんでした。
予想以上に、“ごく普通の”日本の景色がそこには広がっているわけです。
だからといって気になる点がない訳ではありません。
例えば、米軍のナンバーのみを付けて走っている車が散見されるということ。
また、米軍人による事件がたびたび起きるというのも事実です。
このような現実を考えた時、左翼だとか中国がどうというのはかなりレベルの低い議論であるということに気づくはずです。
つまり、ごく当たり前の日本人として、ごく普通の日常を過ごしているからこそ、米軍ナンバーで堂々と公道を走っている車を見れば、沖縄の歴史も考えれば否が応でも占領されているような気持ちにはなるでしょうし、
確率的に国籍による犯罪率に差がないとしても、米国人によって身内が被害を受ければ、日本人として嫌悪感を抱くのは当たり前の感情です。
同様に、「米軍機が嫌なのであれば那覇空港の民間機も追い出せ」というのも、そういう問題ではないのです。
先述した通り、騒音自体がそこまで大きな問題ではないのですから。
もっとも、それらの反対団体が本土や他国から、しかも組織的に動員されて活動をしているという状況や、問題の本質ではないことを非難している(からこそネット上では反論も多々見られる)状況は非難されて然るべきです。
しかし、それらと“現実問題として共産党が当選するから沖縄の人はおかしい”、という理論は別のものです。
後者には理解すべき要素があり、また同じ日本人として理解しなくてはならないのです。
平和記念公園とひめゆりの塔
先ほど、平和記念公園やひめゆりの塔がある糸満市は沖縄の南端だと記述しました。
これ、何故だかご存知ですか?
実は、第二次世界大戦中の沖縄の地上戦で、米兵に徐々に南方へと追い詰められた日本兵の多くは南端の崖から海へと飛び込んだか、そのまま殺されるのを待つ状態であったようで、
ひめゆりの塔も同様に、動員された看護学生等が、日本兵に合わせて南方へと移動していき、最終的には突如解散命令が下され、逃げまどい追い詰められる中多くの命が失われた、という悲惨な歴史を物語っているものなのです。
【ひめゆりの塔 看板①】
【ひめゆりの塔 看板②】
【ひめゆりの塔と防空壕、陸軍病院跡地の碑】
平和記念公園には、多くの戦死者の名前が刻まれた石碑が放射状に並んでおり、また驚いたのが、おそらく沖縄の地上戦に全国各地から兵士が動員されたからでしょうか、各都道府県の慰霊の墓石のようなものが一列に、永遠並んでいました。
【平和の礎と永遠広がる石碑】
【名前は2017年も追加されている】
【島の方角を示す】
【青森県】
【富山県 立山の塔】
【平和記念公園の端】
【南端海岸線】
このような場所をすぐそばに抱えて生活し、まさに今も米軍と隣り合わせどころか、1972年までそもそも日本ですらなかった、という複雑な歴史を抱えているのが沖縄の現実です。
別に私は、だから共産党は素晴らしい、などと言いたいわけではありません。
安全保障体制を考えた時、まさに第二次世界大戦で多くの日本人が死に追いやられたあの沖縄の南端から、逆に中国軍が上陸してくるような未来がないとも言えないこのご時世、沖縄に強力な米軍基地を置くのは仕方のないことであるというのは事実ですから。
だからこそ強固な日米同盟を軸とする自民党がマクロで見れば選挙では圧勝しています。
しかし、沖縄県民の民意もまた、直視しなければならない現実であるということです。
政治の話に限ったことではありませんが、それぞれの地域や人々にはそれぞれの事情があるのに、それがネット上などでは見せかけの正論によって排除されるようなケースが特に最近多々見られます。正論は明らかに右にあります。
それを左寄りの人々が、ナチスだとか騒ぎ、これまた拡散されています。
いずれにしても、そこには本来の地域や人々の事情は無視され、争いだけが残っています。
なんと無意味な光景でしょうか!
そのような意味では、本土から送り込まれた組織的活動家も、所詮不満のはけ口として人気を集め、仕事として議席を獲得している共産党も、これまた本来の沖縄県民の気持ちとかけ離れたものであるのかもしれませんね。。
現実と机上の空論
以前、毎日のように反日デモが報じられ、イオンや日系自動車販売店が次々に破壊されていた時に上海へ家族旅行で行ったことがあります。
その際、現地の中国人何人かに声をかけられましたが、その内容は「最近は反日ブームのようになっているが、我々一般市民の多くは日本が嫌いでもなければ破壊しようとも思わない。訪問してくれてありがとう。」というものでした。
実際に声をかけてきた人が複数人いたというのは、凄いことではないでしょうか。
何が言いたいのかといえば、実際に訪れたり会ったりしてみなくては、想いは伝わらない、ということです。
ネットや報道で盛り上がっているだけでは、所詮何も伝わってこないのです。
(報道機関が果たすべき役割を果たせていないという側面もありますが。)
空港へ帰る前、平和記念公園とひめゆりの塔に1時間程度立ち寄っただけですが、そんなことを考えました。