大学生ζの経済教室3.0

日々の生活に潜む経済ネタ等。半分雑談。

なぜ食品は毎年一方的に値上がりするのか?

繰り返される食品の値上げ

値上げの春――この季節、毎年のようにこんなフレーズがメディアを飾ります。

 

いわゆる ”実質値上げ” とも言われる内容量の減少、値上げ(時には両方!)はダイレクトに家計へ響くこともあり、食品会社への不満の声も多数聞こえてきます。

 

苦しいときに値上げをするのは仕方がないけど、値下げしろよ、とか。

 

 

 

 

このような意見が出るのは、必然でしょう。

 

安倍首相の答弁がちょっとした物議を醸したように、ジニ係数が上昇しているというデータの存在も記憶に新しいところです。

 

では、なぜこのようなことになってしまうのでしょうか。

 

 

"失われた30年"の意味

それは、日本がデフレ社会(厳密には消費者物価指数CPIの上がらない社会)を脱することができないからではないかと思います。

 

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(※ 世界経済のネタ帳より引用)

 

日本のCPIは、1990年頃よりかれこれ30年近くも横ばいです。

 

いわゆる、失われた云十年、というヤツです。

 

 

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 (※世界経済のネタ帳より引用)

 

賃金も同様です。

 

 

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(※世界経済のネタ帳より引用)

 

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(※世界経済のネタ帳より引用)

 

その間に中国は40倍、シンガポールは4倍近くも成長しているわけですから、当然相対的に貧しくなるわけです。

 

 

日本のデフレとグローバル化

デフレ社会。

 

食品は値上がりしているのに、です。

 

ここでポイントとなるのが、値上がりしている食品というのは

 ”大手食品メーカーもしくは大手外食チェーンの商品の価格” であって、国産の野菜や卵の値段ではない、ということです。

 

 

大手食品メーカーや大手外食チェーンは、海外からの輸入品を使用したり、システムや人材面でもグローバルな競争環境の中で企業活動を営んでいます。

 

つまり、外国ではどんどんインフレが進んでいくのだから、仕入れ値は基本的には永遠と値上がりし続けるわけです。

 

そう考えると、冒頭で述べた『苦しいときに値上げをするのは仕方がないけど、値下げしろよ』という意見は、

いかにドメスティックな感覚で、無謀なことかに気付くはずです。

 

 

昔に比べて自動車が値上がりして、今や軽自動車すら手が届かなくなった、という意見もよく目にしますが、これも同じ原理です。

 

自動車メーカーにとっては仕入れ値も上がっていくし、人件費だって、人材獲得はグローバルな競争でどんどん上がっていくわけですから、

グローバル企業の商品の販売価格は世界基準で上がっていくのは必然です。

 

 

一例ですが、食品大手味の素の有価証券報告書によると、2017年度の従業員3459人の平均年収は952万円。

しかも同社の所定労働時間は7時間15分と短く、更なる労働時間の短縮にも意欲的です。

 

 

“大企業の一部の社員が高給を独占して、末端労働者の給料は上がらない” という問題も、結局はここに起因するのではないかと思うのです。

 

だって、例えば保育士やBtoCの国内運送業にグローバルな人材獲得競争はないですから。

 

別に保育士をバカにしているわけでも、ラクな仕事だと言っているわけでもありません。

 

あくまでドメスティックな職業に賃上げ圧力が加わらないのは、

日本のデフレという社会構造が変化しない限り必然であるということです。

 

 

そう考えると、タイトルは『なぜグローバル化が必要なのか?』という普遍的な問いに読み替えることもできるでしょう。

 

 

グローバル化は悪なのか

いっそのこと ”鎖国をしてしまえ” という発想になるかもしれません。

 

だって、これだけ格差が広がって多くの庶民の生活が苦しくなってきているのは、グローバル化のせいなんだろう、と。

 

 

ある意味でそれは正論です。

 

おそらく、いわゆる “古き良き昔の日本” と言われるような、穏やかな1億総中流の社会を取り戻せるかもしれません。

 

しかし、それは必ずしも良いこととは言えません。

 

あえて何故かを説明する必要はないでしょう。

 

要するに共産主義ですよね。

 

それが現代の社会になじまないというのは、1億総中流の平和な社会が再び訪れることを夢見る人も含めて、誰しもが理解しています。

 

そして、我々がグローバル化の荒波の中で生まれた様々な利便性を享受しているというのも、また事実です。

 

 

解決策は...?

こう考えると、なかなか難しい問題です。

 

しかし一つ分かっているのは、少なくともこのグローバルな資本主義社会の歯車を止めることは、もはや誰にも不可能であるということ。

 

ある意味、政治が不満のはけ口になるというのは仕方のないことではありますが、

それは、安倍政権の問題でも、もちろん民主党政権の問題でもないのです。

 

 

これからも格差は拡大していくし、このままいけば日本のデフレが止まることもないでしょう。

 

個人的に一番恐ろしいのが、いま世界を牽引しているアジアの新興国で少子高齢化が始まり、世界中が日本のように、もうどうにもならなくなること。

 

 

どうなっていくのでしょうか。

 

しかしあまり遠い未来でもない気もします。

 

逆に考えれば、日本はその社会を引っ張ることのできるような、モデル国家となり得る可能性を秘めているということもできますが……